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  Tという暑さ  〜変革No3より〜
  1967年 グループ変革に投稿 小波 淳(ペンネーム)

 

     或る暑い夏
     (僕の眼っていた土地がTというかって経験
     したことのない暑さに異常をきたし 
     人は水を求めて自らを見失ったとき)
     僕はその暑さによって甦った

Tという暑さと人々と僕との出合い
彼らは汚水に群がり 移りゆく黒い塊
彼らの嬰児までその足下に敷いて
片時の満足を手に入れる
彼らの生命は彼らの内になく 今
彼らの生命は僕のこの掌の中にある
僕のやることは群の中の流血に着火すること

Tという暑さの中でのみの僕の生命
けだし 短いであろう時間が燃え尽きるまで
僕はアミーバ運動を行う

来たるべき僕の仮死
来たるべき低温に備えて

彼らは涼を求めて狼狽し
僕の熱い吐息に
逃げ惑う彼らの驚愕の顔 顔
嬰児は母の乳首を噛み切り
僕はその嬰児を食う
その絶叫と紫外線との共鳴は僕の食欲に針を刺す
一つの偽装集団が
その意識の中に僕の存在を確認したらしく
ミニチュアの群が
気ぜわしく僕の周りで動き回る
踏み潰す前にその滑稽さが私から興味を取り去る
僕は或る生娘に白羽矢をたてる
その母 (娘ではなくこの私を・・・)

××ist (おお すばらしい)
雷に撃たれた時のような冷ややかな嫌悪が脊髄に流れ
その生娘に掌が延びる
するとどうだろう

生娘は漫火に似た羞恥を捨て去り
××istはマスクを捨てて蒸発
母親は動かない
だから僕は母親も餌にした

蟻のような群の中に炎が移ると
その中に僕の視界が霞む
それと逆行し
一つの光景が顕われる
一羽の鳥が血潮に濡れた塊を啄ばみ子に与えている
これが僕のしている行為かも知れない
だが夢の中での行為と同じく
現実感が伴わない

     気温が次第に三次曲線上を下り始める
     加速度的に・・・・・・・・・・・・

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